hidekatsu-izuno 日々の記録

プログラミング、経済政策など伊津野英克が興味あることについて適当に語ります(旧サイト:A.R.N [日記])

なぜ相対的な人事評価制度は廃止されるべきなのか

先日、「悪いヤツほど出世する」という本を読んでいた時に、なるほど相対的な人事評価制度は廃止すべきという考えはもっともである、という結論に思い至った。*1

悪いヤツほど出世する

悪いヤツほど出世する

 

 以前、「評価は必要だ。だが、強制ランキングシステムはいらない」というエントリで書いたけれども、過去十数年にわたり流行ってきたスタック・ランキング制度*2は、実際に運用した結果として大きな問題が明らかになりアドビ、マイクロソフトIBMゴールドマン・サックスなどの大企業を筆頭に廃止する動きが進んでいる。

アメリカは成果主義だが日本は違う、あるいは日本も成果主義に移行しなければ、という風潮も過去のものになるかもしれない。とはいえ、スタック・ランキング廃止後の制度が日本型の年功序列終身雇用になるわけではない。それらの企業で変わりに導入された仕組みは概ね次のようなものだ。

  • 相対評価を廃止する
  • フィードバック頻度を短くする

後者のフィードバック頻度について特に疑問はない。通常の評価制度は昇給や年俸に合わせ年に1回行われるのが普通だ。とはいえ、私自身も経験があるが、年初計画していたプロジェクトと実際に関わったプロジェクトがまるで違う、などということは実際の業務では頻繁に起きる。それに、1年も立ってからこういう理由であなたの評価を最低です、と言うのであればもっと早く言ってよ、と思うのが人情だろう。

問題は前者の相対評価の廃止だ。相対評価は日本においても一般的なものだと思うので、それを廃止するとはいったいどうやって昇進を決めるんだろうと最初思ったのだが、やはり評価すべき人物や改善が必要な人物は上司などでピックアップして報告するようだ。旧来の評価制度との違いは、中間層についてはその能力の上下を評価しないという点にある。

相対評価の問題点はふたつある。ひとつは、社員間での競争が加熱し本来、協力関係こそが必要な組織力構築の障害になるという点。もうひとつは、人には自分は平均より優れているという「優越の錯覚」というバイアスがあるため、相対評価という客観評価をすることで多くの人々のモチベーションを下げてしまう点だ(なんと9割の人が自分は平均より上だと思っている!)。わざわざ、モチベーションを下げるために人事評価を行うというのは馬鹿げた話に思えるが、実際にほとんどの企業で行われれているのはそういうことだ。

評価すべき人物、改善が必要な人物をピックアップする時点で同じ問題は残るのではないか、とも思われるのだが、それについてはGoogleの「ワーク・ルールズ!」が参考となるのではと思う。相対評価を下すならば、誰が見ても歴然とした差がある場合にだけ境界を引けというのがGoogle推奨のやり方である。

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

 

 

*1:なお、この本自体はあまりお勧めできない。前著の「「権力」を握る人の法則 」の方がまだいい

*2:社員全員をランキングし上位 n% に高報酬を与え、下位 n %は強制的に退職させる仕組み