hidekatsu-izuno 日々の記録

プログラミング、経済政策など伊津野英克が興味あることについて適当に語ります(旧サイト:A.R.N [日記])

「なぜビジネス書は間違うのか」にビジネスの本質を見る

なぜビジネス書は間違うのか」は、たまたま見つけた本だったけど、Amazonレビューの評判が良かったので注文してみたら大当たり。類書では「事実に基づいた経営―なぜ「当たり前」ができないのか?(以下、HARD FACTS)」が絶対おすすめの一冊だったのだけど、ビジネスの本質が垣間見えるという意味ではむしろこの本の方が良いかも。

なぜビジネス書は間違うのか

なぜビジネス書は間違うのか

 

 内容としては、ビジネス書では名著とされる「エクセレント・カンパニー 」などをネタに、実際にはフォーチュン500で評価される有名企業がその後、いまいちな業績しかあげられなかったという事実の紹介がメインとなっている。

HARD FACTSでも同じことには触れられていたけれど、成長期と凋落後の当時の記事の比較を見ると、まったく同じ経営制度、経営者の資質に真反対の評価が与えられていることが明白になって面白い。

同書では、多くのビジネス書が陥る問題を「ハロー効果(後光効果)」で説明する。ようは、「成功しているのだから、きっと同社の特徴的な事柄は素晴らしい効果があるに違いない」と考えがちだということだ。

ただ、個人的には「このハロー効果を排除したらどういう結果がでたのか」の方にむしろ興味を惹かれる。

マネジメントの実践事項は業績の差に関連しており、企業パフォーマンスの全分散の10%を説明することが示された。つまり、製造から顧客サービス、人材管理、財務まですべての面にわたって最もよい実践事項を採用した企業はそうでない企業を約10%の確率で上回る傾向があるということだ。これは統計的に有意で、有用な発見である……

なんと、10%! 素晴らしいマネジメントでも、会社の業績をせいぜい1割しか説明できないというのだ。1割といえば平時の業績変動だってそれくらいはある。

本書では、さらに議論を推し進め「永続する業績などいうものは妄想の類」だと喝破する。イノベーションのジレンマを知っていれば理解できる話ではあるが、この本を読み進めるうちに、こちらの方がむしろ本質なのだ、ということに気付かされる。

顧客から見て、選ばれ、利益を上げることが業績に繋がるならば、ビジネスの法則とは、需要があり、客の目にとまり、他社よりよい条件で、利益率を確保しながら、財・サービスを提供する、というだけのことに過ぎない。

過去、競争優位を勝ち得た企業は、一見すばらしい経営により物事を成し遂げたように見えて、ちょうどいいタイミングでリスクを取ったことで結果的に新規事業が上手く行き、差別化に成功しただけであって、単なる勝者バイアスの域を出ないかもしれないということだ。

一方で、勝ち筋も見えてくる。大企業だからといっていつまでも好業績が続くわけではない。そう考えると、当たるかどうかもわからない小さなイノベーションの種を大量にばらまき続けることこそが、むしろ業績を担保し続ける唯一の方法ということなのかもしれない。

事実に基づいた経営―なぜ「当たり前」ができないのか?

事実に基づいた経営―なぜ「当たり前」ができないのか?