昨年、40歳を超えてからというもの、残りの人生どう過ごすべきか考えることが多くなった。いっそ、そのことを書くのも新年一発目としてはいいのではないか、と思ったのだが、あまりにも陰々滅々とした内容になるため、昨年読んだビジネス書の紹介をすることにしてみた。
過去の文章を読んだことがあれば、私がいかにビジネス書のことを快く思っていないか、ということがわかるかと思う。多くのビジネス書は根拠に欠け、成功譚を大きく取り上げる一方、失敗した事例は端から切り捨てられている。
しかし、その一方でいろいろなビジネス書を読むうちに、成功者がなぜそのような結論に至り、決断に至ったのか、というプロセスには意味があるのではないか、と思うようになった。経済政策も同様ではあるが、学術的結論を待つには人生は短すぎる。限られた時間の中で有効な手を打たなければならない時、何を理由に実行したのか、そこに興味を覚える。
1冊目:正垣泰彦著「サイゼリヤ おいしいから売れているのではない 売れているのがおいしい料理だ」
サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 正垣泰彦
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/08/02
- メディア: 文庫
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サイゼリヤ社長がノウハウを書いた本。冒頭から店を出したものの客は来ないわ、客同士の喧嘩が原因で火事になり店舗を消失するわ、とツカミも完璧なのだが、今のサイゼリヤになるまでに行った施策となぜそなければいけないのかという理屈が事細かに語られており、とても為になる。飲食店に限らず、この本で語られていることを自分の業種だとどうだろうかと置き換えて読むと、いろいろ気付かされることもあるのではないだろうか。
2冊目:大竹慎太郎著「起業3年目までの教科書」
起業を確実に成功させる驚きの方法が書いてある。一般にこういうのは眉唾だと思うのだけど、この本の結論にはおおいに納得させられた。結局のところ、起業を成功させたければ、情熱とコミュニケーション力だけあればよく、ビジネスモデルなんてものはビジネスの拡大期にでも考えればいいのだ、という身も蓋もない話。
3冊目:島田潤一郎著「あしたから出版」
資産も実績も人脈も何もない著者が、情熱だけで翻訳権を得て、和田誠や高橋和枝に挿絵を頼み、出版社を立ち上げた経緯を記した本。情熱の力は何物にも勝る!
4冊目:パティ・マッコード著「NETFLIXの最強人事戦略」
この本で書かれているノウハウは基本的に気が狂っているので、普通の日本企業が真似するのはやめた方がいいだろう。トヨタのかんばん方式同様に、NETFLIXの会社の仕組み、培ってきた文化に最適化されただけかもしれず、あまり一般化するような話ではないように思える。
ただ一方で、世間と常識とされている組織運営のノウハウが本当に意味のあることなのか考え直す一助にはなるように思う。最近、ホラクラシーという組織論も出てきているが、従来型の組織運営スタイルが本当に効率的なのか、問い直されるフェイズに来ているのは確かだ。
5冊目:オースティン・クレオン著「クリエイティブの授業」
クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST "君がつくるべきもの"をつくれるようになるために
- 作者: オースティンクレオン,Austin Kleon,千葉敏生
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2012/09/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ビジネス書というより自己啓発書に近いものだが、クリエイティブなことを始めるためのガイドとして素晴らしいと感じたので紹介したい。この本の良いところは、「100%のオリジナリティなんてない」、「まずは好きなアーティストから盗め」などアドバイスがいちいち実践的という点。「定職を持とう」「平凡に生きよう」みたいなアドバイスもある。
悩んだとき、人生に躓いたときに読み返したくなる一冊。