今日紹介するのは、「マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力」という本だ。普通、ブログで本を紹介する場合、素晴らしいのでみんな読んでほしいという思いで書かれるものだが、残念ながらこの本は400ページ近くある大著にも関わらず、数ページくらいしか有意義なことが書かれていないので購入はまったくおすすめできない。
マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力
- 作者: テレサ・アマビール,スティーブン・クレイマー,中竹竜二,樋口武志
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2017/01/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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一番の問題は、当たり前のことが延々と書かれているところだ。当たり前のことは、誰もがわかっていながら実践するのが難しいから皆困っているのであって、気付いたくらいで問題が解決するわけがない。そんなに簡単に意識改革できるのなら、自己啓発本の何冊か読むだけで解決するだろう。
とはいえ、ありとあらゆるページが無内容というわけではない(だからこそ、こうしてブログにエントリを書いているわけだ)。
この本の主張は、多くの上司は、部下のモチベーションを上げるには、給料を上げたり、褒めたり、評価したり、といったことが重要であると思い込んでいるがそれは違う、という点にある。昇給や昇進ではあまりモチベーションが上がらないことについては類書でも多く言及されており、実のところあまり目新しさはないのだが、褒めたり評価することすらも最も重要というわけではない、というのは確かに発見だとは思う。
さて、著者らが発見した「モチベーションを上げるために本当に必要だったこと」とは何だったのだろうか。それは「進捗する」ことだ。ようはタスクをこなして進めていくということそのものがモチベーションをもたらしているようなのだ。
著者らの気付きは日報分析から得られたものだが、その応用として RPG などでよく見かける「おつかい」システムが取り挙げられている。一時期、「おつかい」はその単純さ故に批判にさらされてきたが、今に至るまで「おつかい」要素はイベント駆動ゲームの根幹を成すものであるし、カード収集なども「おつかい」の一種とみなせるかもしれない。たしかに人々は実際に何の利益もないムダな時間をおつかいゲームに喜々として注ぎ込んでいるようである。
しばらく前から「ゲーミング」という仕事にゲーム性を持ち込むことで、楽しく仕事を進めようという考えが出てきているが、「おつかい」の重要性はそれよりも本質的なことのように思える。
例えば、TODOリストは仕事をする上で非常に効果的とされている。しかし多くの場合、その理由としては、作業が整理できる、重要性の低いタスクを頭から追い出すで精神的負荷を下げるといった効果が強調される。しかし、進捗が明示化されることで達成感をもたらすというモチベーション面での効果が一番重要だった、ということも考えられる。この本の主張は小さな気付きではあるが、とても重要なヒントが含まれているのかもしれない。