つい最近まで世界史まったくわからない人だったのだが、さすがに7冊読むとそれなりに流れが見えてくる。読んだ本は次の通り。
「『民族』で読み解く世界史」は多少注意が必要な部分もある(実際、読んでいてひっかかる記述もある)ようだが、他は特に問題のある本ではないようだ。
個人的におすすめなのは圧倒的に「イスラームから見た「世界史」」で、イスラム教に関する誤解がとけるだけでなく、権力争いに関する記述が絶妙でほとんどゲーム・オブ・スローンズ感覚で読める。むしろ、これと同じスタイルで書かれた普通の世界史がほしくなってくる。
一方、一番おすすめしないのが「新もういちど読む山川世界史」。これで学んだら世界史嫌いになるだろうな、という作り。学習指導要領の縛りがあるのだろうか、時系列も入り組んでるし、年号、国名、人名が溢れかえってさっぱり頭に入ってこない。同じ読むなら「世界史/いま、ここから」の方が地域別に時系列でまとまっており圧倒的に読みやすい。
他にも何冊かチラ見したのだけど、こと世界史に関しては、読み物系の本はいつの時代のどの地域の話なのかがわからず、むしろ理解が難しくなるように感じた。今回挙げた本以前に「ぴよぴーよ速報」も見ていたのだけど、ある程度理解した状態で見ないとあーまたなんか戦争やってんな、くらいにしか感じられず意味がなかった。理解が進んだ今の方が楽しめるかもしれない。
以前、「10分で日本史」という資料を作ったこともあり今度は「10分で世界史」ができないかな、と考えながら読んでいるものの当然のように難しい。世界史は最低でも地域×時系列となるので最低限必要かなと思われるトピックだけで溢れかえってしまう。
逆に考えて、絶対これは外せないという要素を10個ほど選ぶしかないのかもしない。
世界史上、最も重要な出来事が大航海時代と産業革命なのは間違いない。それ以前はあくまで国家間の領土の拡張/衰退だったのに、以後は全世界が欧米列強に陰に陽に支配される形になってしまった。日本はアメリカの属国だとよく言われるが、中東諸国に比べればはるかにましだろう。植民地化され、植民地から解放されても国内の政変に大国が介入してきた挙句、国自体が崩壊しかねない状態に追い込まれる。ひどい話だと思うがそれが力のない国の現実なのだろう。
これらの出来事に比べれば世界大戦もナポレオンもたいしたことではないと言えなくもないが、だからといって外してしまうとニーズからもかなり外れてしまう。
西洋中心主義な一般の世界史になじんでいるとむしろわかりにくいが、古代においてヨーロッパはただの森だし、近世になるまでは中東、アジアの方が豊かで世界の中心だった。とはいえ、後世への影響が大きいのはヨーロッパなので結果的にそちらの方がニーズが大きい、というところに世界史の難しさがある。
モンゴルなど遊牧地域もシルクロードが盛んだった時代には中東や中国よりも栄えていたにも関わらず、現在のそれらの地域は重要性が著しく低いため扱いが小さくならざるを得ない。元(げん)以前は記録に乏しいとは言っても、それだけが理由ではないはずだ。
世界史などというものは存在しない、と以前書いた。地域、というまとまりもそうだし、民族、というまとまりもそうであるとたびたび語られるけれども、世界史という枠で語る場合にはある程度の抽象化が必然とならざるを得ない。そこら辺が歴史的事実の積み重ねでも語れてしまう日本史との大きな違いのように思う。