hidekatsu-izuno 日々の記録

プログラミング、経済政策など伊津野英克が興味あることについて適当に語ります(旧サイト:A.R.N [日記])

中高生の時に知りたかった英語の話(文法編)

以前、「中高生の時に知りたかった英語の話」というエントリを書いたが、相変わらず英語学習を続けている。で、今回は文法の話。

文法を学ぼうと思ったとき、まず考えたのは(私はプログラマなので)BNFとかチートシートを見るのがよいんじゃないか、ということだった。しかし、これが意外に見つからない。*1

ないのなら作って見せようホトトギス

というわけで作ってみたのがこちら(SpeakerDeckからPDFのダウンロードも可能)。

 

 

様々な文法を一覧化するよりも、文全体の構造を1枚で表現しつつ、副詞のルールにこだわってみた(というより副詞のルールがよくわからなかったので勉強がてらまとめてみた)。

今回はこのチートシートを使って英文法を解説してみようと思う。*2

まず、下記が文の構造となる。

文の構造

実のところ英語の文の構造はさほど難しくない。

主語と述語は、(命令文、感嘆文などでは省略されることがあるものの)必ず存在する。*3

文形も5種類のみ。文を形成する品詞も名詞(句/節)、動詞(句)、形容詞(句/節)、副詞(句)の4種類しかない。なお、形容詞とは名詞を修飾する品詞、副詞とは形容詞や動詞を修飾する品詞を指す。*4

なぜ、文の構造がこんなに簡単であるにも関わらず英文の読解が難しいのか。理由はいくつかある。

  1. 文中の様々な箇所に副詞(句)が現れる。
  2. 名詞(句/節)、形容詞(句/節)、副詞(句/節)は、動名詞、to不定詞、関係詞を使うことで入れ子構造にできる。
  3. 同じ単語や句が複数の品詞の役割を担う(例えば、name は名詞にも動詞にも形容詞にもなる)。

1、2はともかく、なぜ 3 のような意味不明な事態になっているのかと不思議に思ったりもするのだけど、おそらく実情は逆で、"意味がわかる文"というものがまず存在し、後から言語学的な品詞を割り当てたのだろう。意味が通じるのであれば、動詞だろうが名詞だろうが形容詞だろうが同じ単語で修飾できた方が便利に違いない。実際、「口語英文法入門 再改訂版」によれば、口語では副詞が ly が取れ形容詞形で使われることも一般化しているようだ。

とはいえ、英文読解ではなく英会話のコンテキストに限れば、とりあえず名詞と動詞を決めて、動詞に必要な目的語や形容詞を付加し、あとは補足情報を副詞として連ねればいいわけで大変気持ちが楽になる。

問題は副詞だが、基本的には文の先頭で使う接続副詞、助動詞と動詞の間に置く否定や程度に関係する副詞、形容詞や副詞を強調する副詞、文の後半に連ねて置く副詞の4つしかない。最後のひとつ以外はそれぞれ使える副詞が決まっている。それさえ覚えれば、残りすべての副詞は文の後半に詰め込んで構わない。

副詞の順番は一見難しいが、調べる限り単に”重要度の高い順”というだけの話のようで、場所→時間の順番が良いとされているのも重要度的にそれが普通であろうということのようだ。時間→場所となっている文もそれなりに見つかる。文の先頭や助動詞の前に副詞が来るケースもあるが、これは単に強調しているだけで"重要度の高い順"の延長線上にある。ただ、単一の副詞→前置詞から始まる副詞句という順番もあるようには感じる。もちろん、これは混ざるとわかりにくいからというだけの話と思われる。

そういえば、受験英語ではカンマは重要で「カンマのありなしで意味が変わる」という話がよく説明される。しかし、例えば先頭に副詞がくる場合、文法上はカンマが必須だが、実際には入らないことも多いそうだ。これも逆に考えるべきで、カンマがないと理解しずらいからカンマが必要になるだけだ。誤解が起こらないなら入れる必要はない。むしろ、カンマが無くとも誤解を招かないような別の表現に変えることが望ましい。ここら辺の事情は日本語の読点と変わらない。

英文法チートシートは今後どんどん改善してきたいと思っているのでご意見があればコメントを頂ければ幸い。

 

口語英文法入門 再改訂版

口語英文法入門 再改訂版

  • 作者:小林 敏彦
  • フォーイン スクリーンプレイ事業部
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*1:正確に言うと、ありはしたがイメージが違った。

*2:ただし、言語学的に正しい説明を行うつもりはないのでその点は理解いただきたい。なお、文法解釈については「英語事始め (放送大学教材)」の影響を強く受けている。

*3:よく日本語は主語が省略されるが英語はそうではない、とされているが、「口語英文法入門 再改訂版」によれば、口語では英語でも主語や動詞がたびたび省略されるようだ。Thank you. も決して命令形というわけではなく「I thank you.」の I が省略されているのだそうだ。

*4:ここで言う"文"は言語学上の"文"の概念とは一致していない。英語の場合、文は大文字から始まりピリオドあるいはクェスチョンマークで終わるが、このチートシート上では接続詞やセミコロンで区切られたものを文として扱い、接続詞は文と文を接続するものとして扱っている。理由はその方が"文"の世俗的な用法に近く直感的であるし、副詞節を扱わないてよいので理解が楽になるからだ。