ご冗談をあはは……と思うのが人情であろう話題なのは間違いない。通常、
- 経済学でお金持ちになった人なんているんですか?
- いえ、経済学というのは限られた資源を有効に利用するための学問なので、個々人が金持ちになるための学問ではないんですよ。そういうことが知りたければ経営学学んでね!
というやりとりが行われるものと相場が決まっている。にも関わらず、ビジネスに役立つなんてホンマかいな、という話である。
私もずっとそう思っていのだが、最近、新規ビジネスとか新人育成とかに関わっていることもあり、意外にそうでもないのかもと思えてきた。
例えば、こんなのはどうだろう。
- 市場経済において、ある主体が他の主体より利潤を得ている状態はどんな状態だろうか。
いわゆる不完全市場の議論である。すぐに想起されるのは独占、あるいは寡占であろうし、独占的競争などの用語が思い出す人もいるかもしれない。これは、企業が他よりも高い利益を上げる方法に他ならない。
ようは利益を上げたければ独占力を持ったり、他社をコントロールできたりする企業になる必要があるわけだ。「利益を上げるにはどうするか」というビジネス上の課題は一見、曖昧模糊としているが、「不完全市場を自ら作り出すにはどうすればよいか」という問題にブレイクダウンすることで、より具体的なアイデアに紐付けやすくなるのではないだろうか。
他には有効需要の原理についての議論も挙げられるだろう。ようは需要が無ければ売れないという当たり前のことなのだが、しばしば新規ビジネスを立ち上げる際には無視されてしまう。これを実現するためには、いくらかかるから、何個くらい売らないと元を取れない、などと皮算用に陥ってしまいがちだ。市場にはいくらだったらこれくらいの数売れるという需要があるので、そこに合うように採算を考えなければ決して上手くいかない。ニーズからシーズへと言ったところで潜在的な需要があるからこそのシーズなのだから、需要の想定もできずにビジネスを立ち上げるなど無謀すぎやしないだろうか。
あと、これはよく言われることだが「比較優位」の概念も挙げられるだろう。たとえ、アインシュタインの方がお手伝いさんよりも物理学も部屋の掃除の両方の能力が高かった(=絶対優位)としても、部屋の掃除をお手伝いさんに任せることで、より高い生産性を手に入れられる。分業のメリットは、理論的にも実証的にも正しいということは広く知られるべきだろうし、自分の不得手な分野をがんばるよりも、得意分野に注力したほうがより良いかもしれない、という意味でも教訓的ではないかと思う。