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hidekatsu-izuno 日々の記録

プログラミング、経済政策など伊津野英克が興味あることについて適当に語ります(旧サイト:A.R.N [日記])

性別、国籍、年齢の多様性は組織にマイナス

企業制度

世界の経営学者はいま何を考えているのか」の著者、入山章栄氏の新著「ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学」に面白い話が載っていた。

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

 

 大昔は、学者の書く本と言えば、一般受けのしないお硬いタイトルの本が多かったけれども、スティグリッツの邦訳はじめ、昨今はキャッチーなタイトルも多くなった。一見、トが付く類の煽り書名だが、中身はたいへん面白かった。

特に13章の「日本企業にダイバーシティー経営は本当に必要か」は、センシティブな話題も含み大変興味深い。正直、ビジネスの業界用語に疎い当方としては、ダイバーシティと言われても、お台場のあれしか思い浮かばないのだけれども「人の多様性」を意味する言葉だそうだ。たしかに、女性比率を上げようとか、人員登用の国際化とか、しばしば耳にする話題ではある。

著者(の語る最先端の経営学での知見)によると、まず人の多様性と言っても、

  • タスク型の人材多様性:実際の業務に必要な「能力・経験」、例えば、多様な教育バックグラウンド、多様な職歴、多様な経験など
  • デモグラフィー型の人材多様性:性別、国籍、年齢など、その人の目に見える属性の多様性

の2種類があるそうだ。

そして、それぞれのパフォーマンスについて検証した結果、前者については組織のパフォーマンスにプラスの影響を与えるものの、後者については、組織のパフォーマンスに影響を及ぼさないか、むしろマイナスの影響を与える、との結論が得られた。

経験のバックグラウンドの多様性が組織に良い影響を与えるという結論は、知識の多様化により不確実性の高い出来事への対応や新たなビジネスの展開が容易になるという点でたしかにそうだろうと思える。

一方で性別、国籍、年齢の多様性がむしろマイナスに働くという結論は一見不可思議だ。サンデルNHK DVD ハーバード白熱教室で、多様な国籍や性別を迎えることが大学にとって良いことであるという観点から、アファーマティブ・アクションを擁護したのとは対照的に思える。

後者の原因として挙げられているのは、目に見える属性によって人間関係のクラスタが出来やすいという単純な理由だ。たしかに、世界どこにいっても、○○人街のように国籍でコミュニティができていることが多い。人間関係を見ても、同年齢での繋がりに比して、異なる年齢層が混在したグループというのはそうそうはできないように思える。人類みな兄弟という言葉とは裏腹に、人種、民族、宗教による対立がいまだ無くならないどころか拡大している現状は、前述の結果を裏付けているようにも思える。

大学という見識を広げる場では有効でも、組織という目的を達成するための場においては協調することの方が重要だということなのかもしれない。

それにしても以前、「女性だけで企業を作るべき理由」というエントリを書いたのだけれども、意外に核心を突いていたのかもしれない。同書でも、人脈という観点から、女性の内部昇進にはハンディキャップがあることが紹介されている。

男性社員は男性社員と、女性社員は女性社員とつながりやすく、結果、性別による「ホモフィリー(似たもの同士がつながりやすいこと)な社内人脈」ができるのです。

そして多くの日本企業は男性社員が大半ですから、必然的に「男性のホモフィリー人脈」 が厚くなり、よくも悪くもその中でインフォーマルな会社情報がシェアされるようになります。企業幹部の多くは男性ですので、経営方針、人事制度の変更、社内の異動情報などのインフォーマルな重要情報は、いち早く男性の人脈内で回され、男性はますます情報優位になります。

 同書では、他にも「ブレストのアイデア出しは効率が悪い」、「補完性、囲い込みは企業価値に影響しない一方で、新奇性こそが高い企業価値を実現している」など、他にも面白い話題がたくさん書かれている。文章的にも堅苦しくなく、気軽に読めるので、たいへんお買い得な一冊だ。